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親が施設を嫌がるときの対応|理由別の伝え方と進め方

「そろそろ施設を考えたほうがいいのでは」と親に話したら、「絶対に行かない」と言われてしまった。そんな経験をして、どう話を進めればいいか迷っている方は多いと思います。

住み慣れた家を離れることに、不安や抵抗を感じるのは自然なことです。無理に説得するよりも、親の気持ちを聞き、小さな一歩から一緒に試していくほうが、結果的に話が進みやすくなります。

この記事では、次の3つが分かります。

  • 親が施設を嫌がる主な理由と、理由ごとの受け止め方
  • いきなり入居ではなく、見学やデイサービス、ショートステイから段階を踏む進め方
  • 家族だけで抱え込まないための相談先
実家のリビングで、50代の娘と80代の母が、テーブルの上のパンフレットを前に、落ち着いて話し合っているイラスト

結論:迷ったときの進め方の順番

  1. まず、親が何を不安に思っているのかを聞く(説得から始めない)
  2. 今の暮らしで困っていることを、家族と親で一緒に書き出す
  3. デイサービスなど、家に住んだまま使えるサービスから試す
  4. 施設の見学や、ショートステイ(短期間の宿泊)で、施設の暮らしを体験してもらう
  5. 入居を考える段階になったら、親の希望を聞きながら施設を比べる
  6. 迷ったら、地域包括支援センターやケアマネジャーに相談する

親が施設を嫌がる主な理由

嫌がる理由は親によって違うため、まずは理由を聞くことから始めます。

「施設は嫌だ」という言葉の奥には、いくつかの気持ちが重なっていることがあります。よくある理由と、その受け止め方の例を挙げます。

住み慣れた家や地域を離れたくない

家への思いは否定せず、「家で暮らし続けるための方法」から一緒に考えます。

長く暮らした家には、思い出や近所との関係があります。この気持ちが強いときは、まず介護保険のサービスなどを使って、家での暮らしを続ける方法を探しましょう。そのうえで、家での暮らしが難しくなったときの選択肢として、施設の話をします。

「見捨てられる」と感じてしまう

家族が関わり続けることを、言葉と行動で伝えます。

施設に入ると、家族と会えなくなると感じる方もいます。「面会に行く」「一緒に選ぶ」など、これからも家族が関わることを具体的に伝えると、不安がやわらぐことがあります。

施設の暮らしがイメージできない・不安がある

話だけで決めず、見学や体験で実際の様子を見てもらいます。

昔の施設のイメージのままの方や、知らない人との共同生活に不安を感じる方もいます。施設によって、部屋のつくりや日々の過ごし方は違います。実際に見ることで、印象が変わることがあります。

費用が心配

お金の不安は、具体的な金額を一緒に確かめて小さくします。

「子どもに迷惑をかけたくない」という思いから、施設を断る親もいます。施設の種類によって費用は大きく違います。親の年金や貯金で足りるのか、施設に見積もりを出してもらい、一緒に確かめましょう。

自分はまだ大丈夫だと思っている

「できなくなったこと」を責めず、困っている場面を一緒に確かめます。

親自身が、生活の変化に気づいていないこともあります。「危ないからやめて」と言うよりも、「最近、買い物で困っていない?」と聞き、困りごとを一緒に書き出すと、話し合いのきっかけになります。

話し合いを進めるときのポイント

結論を急がず、親が自分で決められるように、何度かに分けて話します。

  • 1回で決めようとしない:最初は「考えてみてほしい」と伝えるだけにして、時間をおいてまた話します。
  • 親の言葉をさえぎらない:反対の理由を最後まで聞きます。聞いてもらえたと感じると、親も家族の話を聞きやすくなります。
  • 家族の気持ちも正直に伝える:「心配で眠れない」「離れていて駆けつけられない」など、責める言い方ではなく、自分の気持ちとして伝えます。
  • きょうだいで意見をそろえておく:家族の中で意見が分かれていると、親も決めにくくなります。
  • 第三者の力を借りる:家族の言葉より、ケアマネジャーやかかりつけ医の話のほうが、受け入れやすいこともあります。

話し合う時期と場所

落ち着いて話せる時間をつくり、電話だけで決めないようにします。

親が体調をくずした直後や、家族が慌てているときは、話がこじれやすくなります。帰省したときなど、時間に余裕があるときに、顔を見ながら話しましょう。

離れて暮らしていると、電話で話を済ませたくなります。ただ、表情が見えないと、親の本当の気持ちは分かりにくいものです。大事な話は、帰省のときやビデオ通話で、親の様子を見ながら伝えましょう。

親を「説得する」のではなく、「一緒に考える」姿勢が大切です。施設に入るかどうかは、最終的には親の暮らしの問題です。親の気持ちを尊重しながら、安全に暮らせる方法を探しましょう。

いきなり入居ではなく、段階を踏んで試す

家に住んだまま使えるサービスから始め、施設の暮らしに少しずつ慣れてもらいます。

介護保険のサービスを使うには、市区町村で要介護認定を受ける必要があります。まだ受けていない場合は、親が住んでいる地域の地域包括支援センターに相談しましょう。申請から使い始めるまでの流れは、介護は何から始めるかの記事で説明しています。

段階を踏む目的は、親に「施設は思っていたほど嫌な場所ではない」と感じてもらうことと、家族が施設の様子を知ることの2つです。どの段階でも、親が「やめたい」と言ったら、その理由を聞いて、次の方法を一緒に考えましょう。

ステップ1:デイサービス(通所介護)に通ってみる

日帰りで施設に通い、施設の雰囲気や人との関わりに慣れてもらいます。

デイサービスは、施設に日帰りで通い、食事や入浴などの支援や、機能訓練などを受けるサービスです。厚生労働省の介護サービス情報公表システムでは、利用者の社会的な孤立感の解消や心身の機能の維持、家族の介護の負担を軽くすることが目的とされています。なお、通所介護は要支援1・2の人は利用できないと案内されています。

ステップ2:施設を見学する

候補の施設を、親と一緒に見に行きます。

「入るかどうかは別として、見るだけ」と伝えると、親も気軽に行きやすくなります。部屋の様子、食事、職員の対応、入居している方の表情などを、親と一緒に見てきましょう。施設の種類の違いは、老人ホームの種類と違いの記事で説明しています。

ステップ3:ショートステイ(短期入所生活介護)で泊まってみる

数日泊まってみることで、施設での暮らしを体験できます。

ショートステイは、特別養護老人ホームなどに短い期間泊まり、入浴や食事などの支援を受けるサービスです。介護サービス情報公表システムでは、家族の病気や冠婚葬祭、出張のときや、家族の負担を軽くするために使うと案内されています。連続して使えるのは30日までです(2026年10月20日に確認)。

入居を考えている施設でショートステイを受け付けていれば、そこで体験してもらう方法もあります。体験入居ができるかは、施設に直接問い合わせてください。

ショートステイのあとは、親に感想を聞きましょう。「食事がおいしかった」「夜は眠れなかった」など、良かった点と困った点の両方を聞くと、施設選びの手がかりになります。

ステップ4:入居先を一緒に比べる

入居を考える段階になったら、親の希望を聞きながら候補を比べます。

施設の探し方や、離れて暮らす親の施設を探すときのコツは、老人ホームの探し方の記事で紹介しています。

急いで判断が必要なときは

安全にかかわる状況では、家族だけで抱えず、すぐに専門家に相談します。

転倒をくり返している、火の不始末がある、食事がとれていないなど、ひとり暮らしを続けるのが危ない状況もあります。こうしたときは、地域包括支援センターやケアマネジャー、かかりつけ医にすぐ相談しましょう。

急いでいる場合でも、親の気持ちを聞く時間はできるだけ取りましょう。ショートステイなどで一時的に安全を確保しながら、その先のことを話し合う方法もあります。

施設への入居や介護の方法など、個別の判断が必要なことは、地域包括支援センターやケアマネジャーなどの専門家に相談してください。

施設に入ったあとの実家のこと

親が施設に入ると、実家が空き家になることもあるため、早めに家族で話し合っておきます。

実家を誰が管理するか、売るか残すかなどは、親の気持ちを聞きながら決めていく必要があります。空き家になる前に決めておくことは、実家が空き家になる前に決めておくことの記事で説明しています。

困ったときの相談先

親が住んでいる地域の窓口に、家族だけでも相談できます。

  • 地域包括支援センター:高齢者の介護や暮らしの総合的な相談窓口です。要介護認定の申請や、使えるサービスについて相談できます。
  • ケアマネジャー:すでに介護サービスを使っている場合は、担当のケアマネジャーに相談します。デイサービスやショートステイの調整もしてくれます。
  • 市区町村の介護保険の窓口:要介護認定の申請や、介護保険の制度について相談できます。
  • かかりつけ医:親の体の状態から見て、どんな暮らし方が合うかを相談できます。

まとめ

親の気持ちを聞き、小さな一歩から一緒に試していきましょう。

親が施設を嫌がるのは、自然な気持ちです。まずは理由を聞き、デイサービスや見学、ショートステイなど、家に住んだまま試せることから始めましょう。

話し合いが進まないときや、急いで判断が必要なときは、地域包括支援センターやケアマネジャーに相談してください。

参考にした情報

※情報は2026年10月時点のものです。制度やサービスの内容は変わることがあるため、最新の情報は各公式サイトや市区町村でご確認ください。