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親から受け継いだ実家に住む人がいない。売りに出しても買い手が見つからない。そのあいだも、固定資産税や草刈りなどの管理の負担は続きます。
そんなときに目にするのが、お金を払って業者に不動産を引き取ってもらう「有料の引き取り」です。2026年10月には、NHKも「相続した実家を手放したい 広がる“不動産の有料引き取り”」として、こうしたサービスが増えていることを報じました。
有料の引き取りは、困っている人の助けになる一方で、確かめずに契約すると、お金を払ったのに名義が移らないなどのトラブルになるおそれもあります。この記事では、次の3つが分かります。
- 有料の引き取りを考える前に、まず確かめること(普通の売却の査定)
- 相続土地国庫帰属制度など、ほかの方法との比べ方
- 業者と契約する前に確かめること(登記、前金、契約書)

結論:売れるかを確かめ、ほかの方法と比べてから決める
- まず、普通に売る場合の査定を取り、売れる見込みと金額を知る
- 売りにくい事情がある家の買取、空き家バンク、相続土地国庫帰属制度など、ほかの方法と費用を比べる
- 有料の引き取りを頼むなら、複数の業者から費用の総額と条件を書面で出してもらう
- 契約の前に、お金を払うのは名義が移った(所有権の移転の登記の)あとか、前金を求められないか、契約書の中身を確かめる
- 家族の合意をとり、迷ったら不動産会社、法務局、消費生活センター(188)に相談する
有料の引き取りは、お金を払って不動産を手放す取引
有料の引き取りは、普通の売却とは逆に、持ち主が業者にお金を払って不動産を引き取ってもらう取引です。
国土交通省の資料では、空き家などが増えるなかで、管理の負担や売れるまでの時間を避けるために、所有者がお金(引取料など)を払い、事業者が不動産を引き受ける取引が行われていると説明されています。
国土交通省の審議会の参考資料によると、こうしたサービスを行う事業者は、2024年12月時点の59社から、2026年1月時点で71社に増えています。そのうち、宅地建物取引業(宅建業)の免許を持つ事業者は約60%にとどまるとされています。
引取料は、物件の状態や事業者によって大きく違います。同じ資料で紹介されている事業者の例では、数十万円から数百万円まで幅がありました。
国土交通省の資料では、こうしたサービスは、所有権の移転とお金のやりとりが円滑に行われる限り、特に問題はないとしています。一方で、宅建業法などの規制が及ばない場合も多いと考えられるため、利用するときに気をつけたい点が示されています。この記事の順番は、その留意点をもとにしています。
1. まず、普通に売る場合の査定を取る
お金を払って手放す前に、本当に売れないのかを、不動産会社の査定で確かめます。
国土交通省の資料では、本来なら適正な価格で売れる不動産が引き取りに回され、適正な価格で取引する機会が失われないかが、課題の1つとして挙げられています。利用者の留意点としても、「宅建業者等への相談など、売却を含む様々な取引形態の比較」が示されています。
「田舎だから売れないだろう」と思っていても、査定を取ると値段がつくことがあります。査定の金額は会社によって違うことがあるため、複数の会社に頼んで比べると、売れる見込みをつかみやすくなります。
複数の不動産会社に査定を頼む方法の例:持ち家売却
株式会社セレスが運営する、不動産の一括査定のサービスです。一度の入力で、最大5社の不動産会社に査定を依頼できます。サイトの利用料はかからないと案内されています。
査定の金額は、売れる金額を約束するものではありません。依頼したあとは不動産会社から連絡が来るので、売るかどうかは家族で話し合ってから決めましょう。
※2026年10月27日に持ち家売却の公式サイトで確認した内容です。
公式サイトはこちら
売りにくい事情がある家は、買取の専門の会社にも相談できる
共有名義になっている、再建築ができない土地にある、長く空き家で傷んでいるなど、普通の売却では買い手が見つかりにくい家は、そうした家の買取を専門にしている会社に相談する方法もあります。値段がつけば、お金を払わずに手放せる可能性があります。
売りにくい事情がある家の買取の例:ワケガイ
株式会社ネクスウィルが運営する、共有持分や空き家、再建築不可の物件など、いわゆる「訳あり」の不動産の買取を専門にしたサービスです。査定は無料と案内されています。
買取は、不動産会社が直接買い取る方法なので、仲介で買い手を探す場合とは条件が違います。普通に売れる家であれば、まず上の査定などで、ほかの方法と比べてから考えましょう。
※2026年10月27日にワケガイの公式サイトで確認した内容です。
公式サイトはこちら
自治体の「空き家バンク」で、買い手や借り手を探す方法もあります。売る・貸す・残すの選び方は、実家が空き家になったらどうするかの記事で紹介しています。
2. ほかの方法と、費用と条件を比べる
相続土地国庫帰属制度は、条件に合えば有料の引き取りより費用を抑えられることがありますが、建物がある土地は申請できません。
- 普通に売る(仲介):値段がつく見込みがあるとき。仲介手数料などがかかり、売れるまで時間がかかることがある
- 買取の会社に売る:売りにくい事情があるが、値段がつくとき。会社が直接買うので、仲介とは条件が違う
- 相続土地国庫帰属制度:建物がなく、条件に合う土地のとき。審査手数料(1筆14,000円)と負担金(多くは20万円)がかかる
- 有料の引き取り:ほかの方法で手放せないとき。引取料は数十万円から数百万円まで幅がある
※国庫帰属制度の金額は法務省、引取料の幅は国土交通省の資料による(2026年11月2日確認)。
相続土地国庫帰属制度のしくみ
法務省によると、相続土地国庫帰属制度は、相続などで受け継いだ土地を、一定の条件を満たせば国に引き取ってもらえる制度です。2023年4月27日に始まり、それより前に相続した土地も対象です。
- 申請できる人:相続や、相続人への遺贈で土地を受け継いだ人。共有の場合は、共有者の全員で申請する
- 申請できない土地:建物がある土地、担保権などが設定されている土地、他人が使う予定の土地、土壌が汚染されている土地、境界が明らかでない土地など
- 審査手数料:土地1筆あたり14,000円。審査で認められなくても返ってこない
- 負担金:10年分の管理費用をもとに計算。多くの土地は面積にかかわらず20万円。一部の市街地の宅地などは面積に応じて決まる(例:100㎡で約55万円)
- 申請先:土地がある都道府県の法務局・地方法務局の本局。相談は全国の法務局で受け付けている
実家の建物が残っている場合は、取り壊してからでないと申請できません。取り壊しの費用もふまえて、有料の引き取りや売却と比べる必要があります。国土交通省の審議会の参考資料では、有料の引き取りの事業者への相談で、「相続土地国庫帰属制度を断られた物件」に関するものが目立つとも紹介されています。
取り壊す場合の費用は、建物の大きさや構造、立地によって変わります。国庫帰属制度を使うか考えるときは、解体業者の見積もりを取って、費用の目安を知っておくと比べやすくなります。
解体工事の見積もりを比べる方法の例:解体工事比較ナビ
株式会社サフタが運営する、解体工事の見積もりを比べるサービスです。条件に合った3〜4社の解体業者に絞って、見積もりを出してもらう形と案内されています。
見積もりを取っても、取り壊すと決める必要はありません。取り壊すと土地の固定資産税が変わることもあるので、市区町村の窓口にも確かめ、家族で話し合ってから決めましょう。
※2026年10月27日に解体工事比較ナビの公式サイトで確認した内容です。
公式サイトはこちら
まだ相続していないなら、相続放棄という選択肢も
親が亡くなって、まだ相続の手続きをしていない場合は、相続放棄をする方法もあります。ただし、相続放棄は実家だけでなく、預貯金なども含めたすべての財産を受け継がないことになります。裁判所によると、相続が始まったことを知ってから3か月以内に、家庭裁判所に申し立てる必要があります。くわしくは、司法書士や弁護士に相談しましょう。
3. 有料の引き取りを頼む前に確かめること
お金を払うのは名義が移ったあとか、前金を求められないか、契約書の中身を、契約の前に必ず確かめます。
国土交通省の資料では、利用するときの留意点として、お金を払う前に所有権の移転の登記が行われたことを確かめることや、費用や条件などの契約書の内容を確かめることが挙げられています。資料で紹介されている、業界の団体の自主的なルールも参考になります。
- 名義が移ってから払うか:引取料を払うのが、所有権の移転の登記の申請のとき以降(引き渡しの日以降)になっているか。業界団体のルールでも、原則として前金を払わない形とされている
- 前金を求められないか:「調査費」「測量費」「手数料」などの名目で、契約の前や登記の前にお金を求められないか
- 費用の総額と内訳:引取料のほかに、登記の費用、測量や残っている物の処分の費用がかかるか。契約の前に、書面ではっきり示されているか
- 契約書の中身:引き渡したあとに不具合が見つかっても責任を問わない取り決め(契約不適合責任の免責)になっているか。解約するときの扱い
- 宅建業の免許:宅地や建物も引き取る業者なら、宅建業の免許を持っているか。国土交通省の「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」で確かめられる
- 事務所と連絡先:実際に営業している事務所の住所と連絡先が公表されているか
- 引き取ったあとの管理:引き取ったあと、どう管理するか、売るのかの方針を示しているか
登記が済んだかどうかは、法務局で登記事項証明書を取ると確かめられます。登記の手続きを誰がするのか(司法書士に頼むのか)も、契約の前に聞いておきましょう。
国民生活センターは、土地を売るためと言って、測量費や広告費、手数料などの名目でお金を払わせる手口の相談が寄せられているとして、お金を求められたら契約の前に家族や周りの人に相談するよう呼びかけています。少しでもおかしいと思ったら、消費者ホットライン188に相談しましょう。
家族で決めておくこと
名義が誰になっているかを確かめ、手放すかどうかは、相続する家族みんなで決めます。
- 名義の確認:実家の名義が亡くなった親や祖父母のままなら、手放す前に相続の登記が必要になる
- 家族の合意:共有になる場合は、全員の同意がないと手放せない。思い出の家なので、気持ちの整理にも時間をかける
- 中の片付け:家財をどうするか。引き取りの条件に、残った物の扱いが含まれているかも確かめる
- 親が元気なうちなら:親の考えを聞いておく。判断する力が心配になってからでは、親の名義の家を手放すのが難しくなる
家の中の片付けの進め方は、実家の片付けの記事と、遠方の実家の片付けを業者に頼む記事で紹介しています。親が元気なうちに家のことを話し合う順番は、実家が空き家になる前に決めることの記事にまとめています。
親の判断する力が心配で、親の名義の家の売却などを考えるときは、成年後見などの制度が関わります。成年後見と任意後見の違いの記事も参考にしてください。
よくある質問
引取料の相場、建物がある場合、国庫帰属制度で断られた場合について答えます。
引取料の相場はどのくらいですか?
決まった相場はありません。国土交通省の資料で紹介されている事業者の例でも、数十万円から数百万円まで幅があり、物件の状態で変わるとされています。1社だけで決めず、複数の業者から、費用の総額と条件を書面で出してもらって比べましょう。
建物が残ったままでも引き取ってもらえますか?
業者によって違います。建物の引き取りを扱う業者もあれば、土地だけの業者もあります。宅地や建物を引き取る業者なら、宅建業の免許を持っているかも確かめましょう。相続土地国庫帰属制度は、建物がある土地は申請できません。
国庫帰属制度で認められなかった土地はどうなりますか?
承認されなかった場合、土地は今の持ち主のままで、審査手数料も返ってきません。ほかの方法(売却、買取、有料の引き取りなど)をあらためて比べることになります。申請の前に、法務局の相談で、条件に合いそうかを確かめておくと安心です。
困ったときの相談先
売れるかどうかは不動産会社、国庫帰属制度は法務局、契約のトラブルは消費生活センターに相談します。
- 不動産会社(宅地建物取引業者):売れる見込みや査定、買取の相談。
- 法務局:相続土地国庫帰属制度の相談、登記事項証明書の取得、相続の登記の相談。
- 市区町村の空き家の相談窓口:空き家バンクや、取り壊しに関わる支援の有無(名前や担当は市区町村によって異なります)。
- 司法書士・弁護士:相続の登記、相続放棄、契約書の確認。
- 消費者ホットライン 188:業者との契約やお金の請求で困ったとき。近くの消費生活センターなどを案内してくれます。
まとめ
有料の引き取りは最後の手段として、売れるかを確かめ、ほかの方法と比べてから、契約の中身を確かめて決めましょう。
- まず、普通に売る場合の査定を取る
- 買取、空き家バンク、相続土地国庫帰属制度と、費用と条件を比べる
- 有料の引き取りは、複数の業者から総額と条件を書面で出してもらう
- お金を払うのは名義が移ってから。前金を求められたら、契約の前に家族や188に相談する
実家を手放すことは、気持ちのうえでも簡単ではありません。急いで決めずに、家族で話し合い、専門家や公的な窓口も頼りながら進めてください。
参考にした情報
- NHK「相続した実家を手放したい 広がる“不動産の有料引き取り”」(2026年10月29日)
- 国土交通省「不動産の『引取サービス』について」(2026年11月2日確認)
- 国土交通省 審議会の参考資料(不動産の有償引取サービス。2026年11月2日確認)
- 法務省「相続土地国庫帰属制度について」(2026年11月2日確認)
- 法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」(2026年11月2日確認)
- 法務省「相続土地国庫帰属制度の負担金」(2026年11月2日確認)
- 国民生活センター「土地売却のため? 金銭を請求されたら要注意 原野商法の二次被害」(2026年11月2日確認)
- 裁判所「相続の放棄の申述」(2026年11月2日確認)
- 国土交通省「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」(2026年11月2日確認)
- 法務局「登記事項証明書(土地・建物)、地図・図面証明書を取得したい方」(2026年11月2日確認)
※情報は2026年10月時点のものです。制度やサービスの内容は変わることがあるため、最新の情報は各公式サイトや市区町村でご確認ください。