親がサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)に入っている、またはこれから入る予定がある。そんなとき、「お金の預け方は大丈夫だろうか」「契約書のどこを見ればよいのだろう」と気になる方は多いと思います。
サ高住は、国の基準を満たして都道府県などに登録された住まいです。ただ、お金の扱いや介護サービスの使い方は、住まいや契約によって違います。契約の内容を知っておくと、困ったときに気づきやすくなります。この記事では、次の3つが分かります。
- 前払金と返還のしくみ、預けるお金の管理のルール
- 介護サービスの利用を強制されないか、退去の条件
- 気になることがあったときの相談先

結論:お金・介護・退去の3つを、契約書で確かめる
- 契約書と重要事項の説明書で、毎月払うお金と、前払金があればその返還のしかたを確かめる
- お金や通帳を預けるなら、預ける範囲、書面での約束、出し入れの記録と報告のしかたを確かめる
- 介護サービスは、併設の事業所を使うことが入居の条件になっていないかを確かめる
- 事業者から解約されるのはどんなときか、入院したらどうなるかを、契約の前に確かめる
- おかしいと思ったら、住まいの窓口に聞き、変わらなければ市区町村や消費生活センター(188)に相談する
サ高住は「住まい」:決まりと契約で守られている
サ高住は、安否確認と生活相談のサービスが付いた、高齢の方向けの賃貸住宅などで、都道府県などに登録されています。
国土交通省によると、サ高住は、バリアフリーや床面積などの基準を満たし、少なくとも安否確認(状況把握)と生活相談のサービスを提供する住まいとして、都道府県などが登録しています。食事や家事の手伝い、介護などのサービスがあるかどうかは、住まいによって違います。
国の登録の基準には、契約について次のような決まりがあります。
- 長く入院したことを理由に、事業者が一方的に解約できないことにするなど、住み続けられるようにした契約であること
- 敷金、家賃、サービスの対価のほかに、お金を受け取らないこと
- 前払家賃などを受け取るときは、返すときのルールと、お金を守るしくみ(保全措置)があること
事業者には、契約の前に、提供するサービスなどを説明することも求められています。説明を受けたときの書類は、家族も目を通しておきましょう。
1. 前払金と、返ってくるお金のしくみ
前払金がある場合は、入居から3か月以内に退去すれば、住んだ期間の家賃などを除いて全額が返ると法律で決まっていますが、それを過ぎると返る額が減ります。
厚生労働省のサイトに載っている事業者団体の「消費者向けガイドブック」によると、住まいの費用の払い方には、毎月払う「月払い方式」と、入居のときに家賃の全部または一部をまとめて払う「前払い方式」があります。サ高住の多くは月払い方式で、前払い方式は制度上はできるものの、あまり採用されていないとされています。
前払い方式の場合、前払金(入居一時金や入居金と呼ぶこともあります)は、ずっと住むことを前提に払う家賃です。同じガイドブックでは、次のように説明されています。
- 入居から3か月以内に契約が終わった場合は、住んだ期間の家賃や食費などを除いた全額が返る(法律で決まっている)
- 3か月を過ぎると、前払金の一部が返らないことがあり、返る額は大きく減ることがある
- 住まいごとに決めている「想定居住期間」以上に住むと、前払金は返らない(そのかわり、それ以上住んでも追加の家賃はかからない)
- 返るお金の計算のしかたは、事業者によって違う
前払金を払う場合は、返るお金の計算のしかたと、前払金を守るしくみ(保全措置)が契約書や重要事項の説明書に書かれているかを確かめましょう。
国の登録の基準では、敷金、家賃、サービスの対価のほかに、お金を受け取らないこととされています。名目のはっきりしないお金を求められたら、払う前に何のお金かを書面で確かめ、分からなければ相談しましょう。
2. 預けるお金の管理のルール
お金の管理は本人がするのが原則で、住まいに預けるなら、書面での約束と、管理のしかた、定期的な報告が決められているかを確かめます。
厚生労働省の「有料老人ホーム設置運営標準指導指針」では、入居者のお金や預金の管理は、入居者自身が行うことを原則としています。食事や介護などのサービスを提供するサ高住は、有料老人ホームにもあたり、この指針の、運営やサービスについての決まりの対象になります。
指針では、本人が特に頼んだ場合や、認知症などで本人が十分に判断できず、身元引受人などが承諾した場合には、住まいの事業者がお金を管理することもやむを得ないとしています。そのときは、次のことが求められています。
- 頼んだこと、承諾したことを、書面で確かめる
- お金の具体的な管理のしかたを、管理の規程などで決める
- 本人や身元引受人などに、定期的に報告することを、管理の規程などで決める
親がお金や通帳を住まいに預けている、または預けようとしているときは、次のことを確かめておきましょう。
- 何を預けるか:現金だけか、通帳やキャッシュカード、印鑑も預けるのか
- 書面があるか:預けることを頼んだ・承諾した書面と、管理の規程を見せてもらえるか
- 記録と報告:出し入れの記録(何に、いくら使ったか)を、どのくらいの間隔で、誰に報告してもらえるか
- 家族が見られるか:家族が記録や残高を確かめたいときに、見せてもらえるか
報告を受けたら、領収書や通帳の記録と照らし合わせておくと安心です。親が自分でお金の管理をするのが難しくなってきたときは、家族が手伝う方法のほか、成年後見などの制度もあります。成年後見と任意後見の違いの記事で、どちらをいつ考えるかの順番を紹介しています。
3. 介護サービスの利用を強制されないか
サ高住は「自宅」と同じなので、どの事業所の介護サービスを使うかは本人が選べ、併設の事業所を必ず使う必要はありません。
厚生労働省のサイトにある冊子「高齢者向け住まいでの介護保険サービス利用にあたって確認したいポイント」(2022年3月)では、サ高住は施設ではなく「住宅」、つまり自宅と考えてほしいとしています。介護保険のサービスは、ケアマネジャーの助言を参考にしながら、本人が選んで決めるものです。
同じ冊子では、建物に併設された訪問介護やデイサービスは、必ず利用しなければいけないものではなく、選択肢の1つとされています。入居の前から担当してくれているケアマネジャーに、入居後も続けて担当してもらうこともできます。
冊子では、次のようなことは、サービスを自分で選ぶ権利が守られていない可能性がある例として挙げられています。
- 併設のデイサービスや訪問介護を使うことが、入居の条件になっていた
- 入居前のケアマネジャーに続けてほしかったが、住まいと同じ会社のケアマネジャーに変えさせられた
- 入居前のデイサービスを続けたかったが、入居後は使えないと言われてあきらめた
- 本人が必要と感じていない介護保険のサービスを強く勧められた
厚生労働省の指針でも、住まいの事業者は、入居者の介護サービスの利用を、自分たちや関係のある特定の事業者に限ったり、誘導したりしないこと、入居者が希望する介護サービスの利用を妨げないこととされています。
親のケアプラン(介護サービスの計画)を、家族も一緒に見せてもらいましょう。使っているサービスが親の希望に合っているか、毎月の介護保険の自己負担がいくらかを知っておくと、気になることに早く気づけます。
4. 退去の条件と、退去のときの費用
事業者から解約されるのはどんなときか、入院や体の状態が変わったら住み続けられるかを、契約の前に確かめます。
消費者向けガイドブックでは、事業者から解約を申し出る条件は、トラブルを防ぐために、契約の前によく確かめる必要があるとしています。例として、家賃や食費などの滞納、ほかの入居者への迷惑行為が挙げられています。
- 解約の条件:事業者から解約されるのはどんなときか。予告の期間はどのくらいか
- 入院したとき:長く入院した場合の扱い。国の登録の基準では、長期の入院を理由に事業者が一方的に解約できないことにするなど、住み続けられる契約が求められている
- 体の状態が変わったとき:医療的な管理が必要になったら住み続けられるか。ガイドブックでは、サ高住は医療機関ではないので、住み続けるのが難しくなることもあるとしている
- 退去のときの費用:原状回復でどこまで費用を請求されるか。ふつうに使って古くなった分は、事業者が負担する契約が一般的とされている
退去のときの費用のトラブルを防ぐため、ガイドブックでは、入居のときに、事業者の立ち会いのもとで部屋の状態を確かめておくことを勧めています。写真を撮っておくのも1つの方法です。
入る前・入っている親のための確認リスト
契約書と重要事項の説明書を手元に置き、次の項目を1つずつ確かめます。
- 毎月払うお金(家賃、共益費、サービス費、食費)と、そのほかにかかるお金(介護保険の自己負担、日用品など)
- 前払金の有無と、返るお金の計算のしかた、保全措置
- お金や通帳を預けるか。預けるなら、書面、管理の規程、出し入れの記録と報告
- 介護サービスやケアマネジャーを、自分で選べるか
- 事業者から解約される条件と、入院したときの扱い
- 退去のときの原状回復の範囲
- 困ったときに、住まいの誰に相談すればよいか
これから住まいを選ぶときは、複数の住まいを見学して比べることも大切です。高齢の方の住まいの種類と違いは老人ホームの種類の記事で、遠くに住む親の住まいを探す手順は老人ホームの探し方の記事で紹介しています。親が住み替えを嫌がるときは、親が施設を嫌がるときの記事も参考にしてください。
帰省のときに、親の暮らしやお金のことを確かめるポイントは、帰省で確かめる親のチェックリストの記事にまとめています。
よくある質問
預けたお金の確かめ方、介護サービスの事業所の変え方、契約書が手元にないときについて答えます。
預けているお金が正しく使われているか、家族が確かめられますか?
住まいに、出し入れの記録や残高の報告を見せてもらえるか聞いてみましょう。厚生労働省の指針では、事業者がお金を管理する場合、本人や身元引受人などへの定期的な報告を、管理の規程などで決めることとされています。報告がない、説明があいまいなどのときは、住まいの責任者に確かめ、変わらなければ相談先に相談しましょう。
入居してから、介護サービスの事業所を変えられますか?
変えられます。厚生労働省のサイトの冊子でも、介護保険のサービスは本人が選んで決めるものとされています。まずはケアマネジャーに希望を伝え、話が進まないときは、市区町村の窓口(地域包括支援センターなど)に相談しましょう。
契約書が見つかりません。どうすればよいですか?
住まいの事業者に、契約書と重要事項の説明書の写しをもらえるか聞いてみましょう。親の了解を得たうえで、家族も一緒に内容を確かめておくと安心です。
困ったときの相談先
まず住まいの責任者に聞き、変わらなければ市区町村や都道府県の窓口、消費生活センターに相談します。
- 住まいの責任者・相談の窓口:契約やサービス、お金の管理について、まず確かめる先。
- 市区町村の窓口・地域包括支援センター:介護サービスの使い方や、ケアマネジャーのこと、高齢の方の暮らしの相談。
- 都道府県など(サ高住を登録した窓口):サ高住は、都道府県、政令指定都市、中核市が登録し、指導や監督をしています。親が住む地域の、サ高住や高齢者の住まいの担当に相談できます(担当の名前は自治体によって異なります)。
- 消費者ホットライン 188:契約やお金のトラブル。近くの消費生活センターなどを案内してくれます。
- 警察:お金を勝手に使われたなど、犯罪の疑いがあるとき。急ぐときは110番、相談は#9110や最寄りの警察署へ。
まとめ
サ高住のお金と契約は、前払金、預けるお金、介護サービス、退去の4つを、契約書で確かめておきましょう。
- 前払金は、3か月以内の退去なら住んだ分を除いて全額が返る。それ以降の返り方は契約で確かめる
- お金の管理は本人が原則。預けるなら、書面、管理の規程、記録と報告を確かめる
- 併設の介護サービスを使うことは、入居の条件にはならない。サービスは本人が選べる
- 事業者から解約される条件と、入院したときの扱いを、契約の前に確かめる
住まいの職員を最初から疑う必要はありません。家族が契約の中身を知り、親と一緒に確かめる習慣をつけておくことが、親の安心な暮らしにつながります。
参考にした情報
- 国土交通省「サービス付き高齢者向け住宅の登録制度の概要」(2026年11月2日確認)
- 国土交通省「サービス付き高齢者向け住宅」(登録基準の資料。2026年11月2日確認)
- 厚生労働省・国土交通省「高齢者の居住の安定確保に関する法律等の一部を改正する法律の施行について」(2011年10月7日の通知。登録の事務は指定都市・中核市では市長が行う。2026年11月2日確認)
- 厚生労働省「有料老人ホーム設置運営標準指導指針」(2026年11月2日確認)
- 厚生労働省のサイト掲載「高齢者向け住まいでの介護保険サービス利用にあたって確認したいポイント」(2022年3月。2026年11月2日確認)
- 厚生労働省のサイト掲載「高齢者向け住まいを選ぶ前に 消費者向けガイドブック」(事業者団体が作成。2026年11月2日確認)
- 消費者庁「消費者ホットライン」(2026年11月2日確認)
※情報は2026年10月時点のものです。制度やサービスの内容は変わることがあるため、最新の情報は各公式サイトや市区町村でご確認ください。